本書で扱う積分は,幾何学的に視覚化可能で容易に理解できるリーマン和を使って構築され,1957年からクルツワイルとヘンストックによって独立になされた.
リーマン和に基づく積分はその歴史の中で一度はルベーグ,ダンジョワ,ペロンらの理論により影に隠れることになったが,クルツワイルとヘンストックはリーマン和を復活させ,これらの積分論をやさしく直観的に統一したのである.
このクルツワイル-ヘンストック積分は,R^Nにおけるルベーグ積分よりも一般的でありながら,その構成はかなり単純である.
この積分理論の修得には大した努力が必要でないばかりか,この理論がもたらす利益は余りあるものである.
本書は,この十分容易に理解できる一般的な積分論を提供する,大学学部での初心者向けコースの講義から生まれた.
その目的から,教育的水準を保ちながら不要な数学的テクニックを廃したものになっているのもこの本の大きな特徴である.
Author(s): A.フォンダ (Alessandro Fonda), 中嶋眞澄(訳)
Publisher: 丸善出版
Year: 2022
Language: Japanese
Pages: 270
序文
日本語版への序文
第1章 実1変数関数
1.1 P-分割とリーマン和
1.2 δ-細分の概念
1.3 コンパクト区間上の可積(分)関数
1.4 積分の初等的性質
1.5 (微分積分学の)基本定理
1.6 可原始的関数
1.7 原始関数における部分積分と置換積分
1.8 コーシーの判定基準
1.9 部分区間での可積分性
1.10 R-可積分関数と連続関数
1.11 サックス–ヘンストックの定理
1.12 L-可積分関数
1.13 単調収束定理
1.14 優収束定理
1.15 コンパクトでない区間の積分
1.16 ハーケの定理
1.17 積分と級数
練習問題
第2章 実多変数関数
2.1 直方体上の可積分性
2.2 有界集合上の可積分性
2.3 有界集合の測度
2.4 チェビショーフの不等式
2.5 ゼロ集合
2.6 有界可測集合の特徴付け
2.7 連続関数とL-可積分関数
2.8 積分記号下の極限と微分
2.9 還元公式(累次積分に関する公式)
2.10 積分での変数変換
2.11 微分同相による測度の変換
2.12 変数変換に関する一般的定理
2.13 ℝ²の有用な変換
2.14 ℝ³における円筒座標と球座標
2.15 非有界集合上の積分
第3章 微分形式
3.1 線型空間Ω_M(ℝ^N)
3.2 ℝ^Nの微分形式
3.3 外積
3.4 外微分
3.5 ℝ³での微分形式
3.6 M-[次元]曲面
3.7 微分形式の積分
3.8 スカラー値関数とM-曲面上の測度
3.9 直方体の有向境界
3.10 ガウスの公式
3.11 M-曲面の有向境界
3.12 ストークス–カルタンの公式
3.13 ℝ²における類似の結果
3.14 完全微分形式
付録A. ℝ^Nでの微分法197
A.1 スカラー値関数の微分
A.2 2回可微分スカラー値関数
A.3 ベクトル値関数の微分
A.4 いくつかの計算則
A.5 陰関数定理
A.6 局所微分同相
付録B. ストークス–カルタンの定理とポアンカレの定理
付録C. 可微分多様体
付録D. バナッハ–タルスキーの逆理
付録E. 積分論史抄
参考文献
[15]
訳者あとがき
索引
英数・あかさ
たなはま
やら
奥付
正誤表 (2022.03.23)