距離空間のトポロジー: 幾何学的視点から

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本書では,単体分割できるとは限らない距離空間のトポロジーを,位相空間論的というよりはむしろ幾何学的な側面に焦点を当てて研究する理論の一部を紹介する。このような理論は一般位相幾何学の一分野「幾何学的トポロジー」をなしており,複雑な構造をもつ距離空間を多面体の極限としてとらえ,無限反復および極限操作を通じて調べることにその特徴がある。

様々な極限操作で得られる空間についての考察から始めて,コンパクト距離空間の次元および,ホモトピー型の拡張概念としてのシェイプ型について触れたのち,チェックコホモロジーによるコホモロジー次元論,位相多様体の特徴づけ問題の入り口を解説する。これらの概念の応用例としてコンパクト化の境界,1次元位相力学系の射影極限,リーマン多様体の極限などに現れる空間のトポロジーについてごく簡単に触れる。

これらの主題に関するまとまった解説を邦書の中に見出すことは難しく,また通常の学部教程において取り上げられることも少ない。本書がこのような研究分野の魅力の一端を伝え,進んだ話題に取り組むための一助となることを願っている。

Author(s): 川村 一宏
Series: ひろがるトポロジー
Publisher: 共立出版
Year: 2022

Language: Japanese
Pages: 191

まえがき
第1章 はじめに
1.1 いくつかの例
1.2 準備と記号
第2章 多面体近似および極限操作
2.1 多面体近似・脈複体
2.2 同相写像列の極限, BingのShrinking criterion
2.2.1 同相写像極限
2.2.2 BingのShrinking criterion
2.3 射影極限
2.4 Gromov-Hausdorff収束
第3章 位相次元
3.1 被覆次元および帰納的次元
3.2 1次元位相力学系と射影極限
第4章 ANR空間・シェイプ型およびCell-like写像
4.1 ANR空間
4.2 シェイプ圏
4.3 Cell-like写像
4.4 局所連結コンパクト距離空間の基本群・特異(コ)ホモロジー
第5章 コホモロジー次元とCell-like写像
5.1 定義と基本性質
5.2 Bocksteinの不等式とBockstein系
5.3 ポントリャーギンの例
5.4 Cell-like写像問題
5.5 Edwards-Walshの定理の証明
5.6 局所可縮性, Gromov-Hausdorff極限とCell-like写像
第6章 位相多様体の特徴づけとCell-like写像
6.1 ホモロジー多様体とCannon-Edwards-Quinnの定理
6.2 Star-like集合に対するshrinking定理
6.3 1-LCC条件とDDP
6.4 無限次元位相多様体の特徴づけ
6.5 リーマン幾何学・距離の幾何学への応用
第7章 コンパクト化とその境界
7.1 Z-コンパクト化とinward tameness
7.2 無限遠・Z-境界のshape型
7.3 群のZ-structureとZ-境界
付録A 単体的複体
付録B 未解決問題再録
文献案内
第2~4章
第5~6章
第7章
参考文献
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索引
英数
アカサタ
ハマヤラ