結晶構造を理解するうえで基本となる230個の空間群について,簡単な群から複雑な群まで順を追って解説をした。空間群の代数的表現としてアフィン変換を用い,実際に手を動かしながら理解できるように問題を多数用意した。
◆空間群とは?◆
『空間群』とは,空間を埋め尽くす規則的なパターンを分類するための数学的な考え方です。『空間群』の考え方によれば,鉱物や金属,有機化合物の結晶構造は230通りに分類されます。意外と少ないと思われるかもしれませんが,一つずつ把握するには少し多すぎる数ですね。もっとも,有機化合物に限っていえば8割ほどの結晶がたった5種類の『空間群』に収まってしまうといわれています。『空間群』の基礎をほんの少し知っておくだけで,物質科学への理解は格段に深まることでしょう。
◆こんな方にお勧め◆
卒業研究で初めて結晶学にふれる大学生,研究テーマで結晶構造を扱うことになった大学院生,仕事で結晶構造解析に携わることになった企業研究者,そういう方々が必ず耳にするのが『空間群』。結晶構造解析を行う研究者・技術者にとってその知識が必須なのは当然ですが,近年では必ずしも自身では測定しない人でも結晶構造データを利用する機会が増えています。先輩や同僚が「あの結晶『空間群』何だった?」「とりあえずピーワンバーで解きましたけど,なんだかアヤシイです。ピーツーワンオーバーシーかもしれませんけど,何しろ結晶の質が・・・」などと符牒のようなコトバでやり取りするのを聞いて,得体の知れぬ何かに出会ったような不安を感じたことはないでしょうか。そんなときにはぜひ本書を手に取ってみてください。
◆書籍の特徴◆
本書は230個の空間群について,簡単な群から複雑な群まで順を追って解説することを趣旨とし,実際に手を動かしながら理解できるように練習問題を多数用意しました。これから X線構造解析を始める人や,大学院や企業で結晶工学に携わる人はもちろんのこと,単に数学的な対象として空間群に興味をもつ人などにとって,本書が手ごろな練習帳,便利帳,辞書代わりとなることを期待しています。
◆キーワード◆
化学;有機化学;無機化学;固体化学;結晶構造;鉱物;クリスタルエンジニアリング;結晶工学;結晶多形;群論;点群;線形変換;アフィン変換
Author(s): 北條 博彦
Publisher: コロナ社
Year: 2020
Language: Japanese
Pages: 166
口絵1~6
口絵7~12
はじめに
目次
凡例
1章 結晶格子
1.1 単位格子
1.2 分率座標
1.3 7個の晶系
1.4 14個のブラベ格子
1.5 32個の点群
1.6 230個の空間群
2章 対称操作と変換行列
2.1 線形変換の群
2.2 対称性と点群
2.3 アフィン変換
3章 結晶の対称操作〈前編〉
3.1 並進
3.2 反転
3.3 2回回転
3.4 2_1 らせん
3.5 鏡映
3.6 映進
4章 空間群の等価点一覧表〈前編〉
4.1 三斜晶
4.2 単斜晶
4.2.1 単斜晶系の群
4.2.2 軸の設定と原点の選択
4.3 直方晶
4.3.1 222 点群
4.3.2 mm2 点群
4.3.3 軸変換
4.3.4 mmm 点群
5章 結晶の対称操作〈後編〉
5.1 n回回転
5.2 n_m らせん
5.3 n回回反
5.4 分角2回回転と分角2_1らせん
5.5 対頂3回回転
5.6 分角鏡映と分角映進
5.7 R格子上での対称要素
5.8 ダイアモンド映進
6章 空間群の等価点一覧表〈後編〉
6.1 正方晶
6.1.1 4点群・\bar{4}点群・4/m点群
6.1.2 422 点群
6.1.3 4mm 点群
6.1.4 \bar{4}2m 点群
6.1.5 4/mmm 点群
6.2 三方晶と六方晶
6.2.1 三方晶系の群
6.2.2 R格子の群
6.2.3 六方晶系の群
6.3 立方晶
6.3.1 23 点群
6.3.2 m\bar{3} 点群
6.3.3 432 点群
6.3.4 \bar{4}3m 点群
6.3.5 m\bar{3}m 点群
付録(International Tables of Crystallography, Vol. A の読み方)
索引