本書は、複素関数論をなるべくわかりやすく解説することを目的とした「入門書」である。
執筆においては、「”入門書”としての性質を意識し、解説は可能な限り平易となるようにすること」、「応用的な定理などの紹介よりも、”基本事項”の解説に徹すること」、「例題を多く提示し、計算過程もなるべく略さず説明すること」の3点を常に念頭に置き、複素数の導入から、正則関数の諸理論を経て、留数定理による積分計算の求め方まで、終始懇切丁寧な解説を心掛けた。
複素関数は、純粋数学のみならず電気回路の設計のような実用面においても非常に豊かな広がりをもつ。本書で取り上げた「基本事項」を深く理解すれば、今後、複素関数に関するあらゆる応用例に出会ったとしても、戸惑うことなく対応できるだけの基礎力が身に着けられているはずである。
Author(s): 中島 匠一
Publisher: 共立出版
Year: 2022
Language: Japanese
Pages: 368
まえがき
第1章 複素数
1.1 複素数と,その演算
1.1.1 数体系の発展
1.1.2 複素数の導入
1.1.3 複素数の演算
1.1.4 複素数の平方根と2次方程式の解
1.2 複素数平面
1.2.1 実軸・虚軸と点の位置関係
1.2.2 複素数平面と複素数の和
1.2.3 複素数平面の極座標と複素数の積
1.2.4 極表示と複素数の積
1.3 指数関数の拡張;オイラーの等式
1.3.1 オイラーの等式
1.3.2 指数関数の性質
1.3.3 平方根の計算
1.3.4 円周等分方程式
1.4 複素数平面内の領域
1.4.1 開集合とは?
1.4.2 連結性とは?
1.4.3 有界とは?
1.4.4 無限遠点と立体射影
Q1
A1.1
A1.6
A1.8
A1.12
A1.15
A1.17
A1.22
第2章 複素関数
2.1 複素関数とは?
2.1.1 複素関数の"グラフ":関数の幾何学的イメージ
2.2 簡単な複素関数の例
2.2.1 複素関数z+αとβz
2.2.2 複素関数z²
2.2.3 複素関数1/z
2.2.4 複素関数z+1/z
2.3 多項式(関数)と有理関数
2.3.1 代数学の基本定理(紹介)
2.3.2 代数学の基本定理(実例)
2.4 指数関数と対数関数
2.4.1 指数関数
2.4.2 対数関数
2.5 三角関数
A2
A2.1
A2.6
A2.11
A2.14
第3章 正則関数
3.1 正則関数の定義と性質
3.1.1 関数の極限と連続関数
3.1.2 正則関数の定義
3.2 正則関数の性質
3.3 コーシー・リーマンの関係式
3.3.1 コーシー・リーマンの関係式から導かれること
3.3.2 コーシー・リーマンの関係式(=定理3.14)の証明
3.4 正則関数の例
3.4.1 指数関数と対数関数
3.4.2 正則関数の例のまとめ
Q3
A3.1
A3.6
第4章 複素関数の線積分
4.1 複素数平面上の曲線
4.1.1 ペアノ曲線など
4.1.2 単純曲線,閉曲線,単純閉曲線
4.1.3 ジョルダンの曲線定理
4.1.4 曲線の向き
4.1.5 「良い曲線」の条件
4.1.6 曲線の長さ
4.2 複素関数の線積分
4.2.1 線積分の例
4.3 線積分の性質
4.3.1 例題の答えからの考察
4.4 実積分と線積分
Q4
A4.1
A4.7
第5章 コーシーの積分定理と積分公式
5.1 コーシーの積分定理
5.1.1 「はじめに曲線ありき」のバージョン
5.1.2 領域の境界とその向き
5.1.3 「はじめに領域ありき」のバージョン
5.1.4 1つの応用
5.1.5 定理5.1を使った定理5.7の証明
5.2 コーシーの積分公式
5.3 積分定理(=定理5.1)の証明
5.3.1 グリーンの定理を使った証明
5.3.2 長方形の場合の証明
5.4 積分公式(=定理5.10)の証明
Q5
A5.1
第6章 ベキ級数
6.1 ベキ級数と,その収束半径
6.1.1 ベキ級数の例
6.1.2 ベキ級数の収束半径
6.1.3 定理6.9の証明
6.2 ベキ級数が定める正則関数
6.2.1 定理6.13の証明
6.3 ベキ級数の加減乗除
6.4 ベキ級数による指数関数・三角関数の定義
Q6
A6.1
A6.6
第7章 正則関数の性質とその応用
7.1 正則関数のテイラー展開
7.1.1 基本的な実例
7.1.2 多項式のテイラー展開
7.1.3 正則関数のテイラー展開
7.1.4 テイラー展開の例
7.1.5 定理7.5の証明
7.2 正則関数の零点と,その位数
7.2.1 零点の重複度(=位数)
7.3 一致の定理
7.3.1 定理7.23の証明
7.4 最大値の原理
7.4.1 定理7.25の証明
7.5 リュービルの定理
7.6 代数学の基本定理
Q7
A7.1
A7.6
A7.10
第8章 複素関数の特異点
8.1 複素関数の特異点
8.2 特異点でのローラン展開
8.2.1 ローラン級数
8.2.2 孤立特異点でのローラン展開
8.2.3 複素関数の主要部と留数
8.2.4 除去可能特異点
8.3 極の位数と留数の計算法
8.3.1 極の位数と零点の位数
8.3.2 極での留数の計算法
Q8
A8.1
A8.5
第9章 留数定理とその応用
9.1 留数定理
9.2 留数定理による定積分の計算(その1)
9.3 留数定理による定積分の計算(その2)
9.3.1 半円での積分
9.3.2 条件収束する広義積分の計算
9.4 留数定理による定積分の計算(その3)
9.5 留数定理による定積分の計算(その4)
Q9
A9.1
A9.5
A9.8
A9.12
付録 補足
A.1 複素数の数列と級数
A.1.1 複素数の数列
A.1.2 複素数の級数
A.2 実数変数の複素数値関数の微積分
A.2.1 連続関数
A.2.2 複素数値関数の微分
A.2.3 正則関数との合成
A.2.4 1つの応用例
A.2.5 複素数値関数の積分
A.2.6 積分の性質
A.2.7 命題A.18の証明
A.2.8 広義積分
A.3 集合の上限と数列の上極限
A.3.1 実数からなる集合の上限
A.3.2 数列の上極限
Q付録
A補足.1
A補足.4
A補足.5
A補足.8
A補足.9
参考文献
索引
奥付
章末問題の解答例
初版1刷正誤表