本書は,ベクトル解析をその本来の形で,すなわち2,3次元のユークリッド空間内の領域や曲面,曲線上のベクトル場の積分に関する理論として,関連する諸概念の徹底的な解説とともに詳述している.書名の「微分積分学としての」という語は,このような古典的な状況に限定していることと,ベクトル解析の基本定理を部分積分の公式の一般化と見る視点を徹底したことを表している.これによりベクトル解析の本質が明確にされている一方で,微分形式による表現にも触れ,なめらかな境界を持つ領域に対するグリーンの定理やガウスの定理を 1 の分解を用いて完全に証明するなど,多様体上の理論への一般化に向けた準備にもなっている.
読者は好みに応じて,多変数微分積分学の復習をしながら,かどのある境界を持つ領域の場合も含んだ定理の詳細な証明を学ぶこともできるし,まず基本的な定理の内容を理解して,偏微分方程式への応用やベクトル場の微分の直交曲線座標系での表現などに進むことも可能である.
Author(s): 宮島 静雄
Publisher: 共立出版
Year: 2007
Language: Japanese
Pages: 296
序
目次
第1章 ベクトルと多変数の微積分
1.1 ベクトル解析におけるベクトルとは?
1.2 ユークリッド空間ℝ^N
1.3 ℝ^Nからℝ^Mへの写像の連続性と微分可能性
1.4 多変数関数の積分
第2章 線積分
2.1 線積分
2.2 平面上のグリーンの定理
2.3 なめらかな境界を持つ領域に対するグリーンの定理
問題
第3章 曲面と面積分
3.1 3次元空間でのベクトル積
3.2 曲面と曲面積
3.3 曲面積についての実数値関数の積分
3.4 曲面の向き付け
3.6 向き付けられた曲面上の微分形式の積分
問題
第4章 ストークスの定理とガウスの定理
4.1 3次元スカラー場とベクトル場の微分
4.2 ストークスの定理
4.3 ガウスの定理
問題
第5章 偏微分方程式への応用
5.1 ラプラス方程式のディリクレ問題
5.2 解の一意性
5.3 調和関数の球面平均の性質と最大値の原理
5.4 ポアソン積分—球の場合の解の公式
5.5 ポアンカレの補題とヘルムホルツ分解
5.6 ニュートンポテンシャル
問題
第6章 直交曲線座標系とベクトル場
6.1 ベクトル場の微分の座標系非依存性
6.2 座標変換とベクトル場の微分
6.3 直交曲線座標の例
問題
第7章 微分形式についての形式的な話
7.1 微分形式の外積と外微分
7.2 微分形式とベクトル場との対応
7.3 *-作用素と余微分作用素
問題
第8章 ガウスの定理の詳細な証明
8.1 証明の方針と領域の表現に関する準備
8.2 ガウスの定理の証明
第9章 多変数微分積分学からの準備
9.1 論理と集合の記号
9.2 多次元の空間
9.3 写像の微分
9.4 リーマン積分
9.5 関数の一様収束と微積分
9.6 多変数の整級数
あとがき
問題略解
第2章の問
第2章の章末問題
第3章の問
第3章の章末問題
第4章の章末問題
第5章の問
第5章の章末問題
第6章の問
第6章の章末問題
第7章の問
第7章の章末問題
索引
【記号】
い う え お か き く け こーこう
こしー さ し す せ そ ーそく
そとー た ち て と な の は ひ ふ へーへい
へいー ほ ま み む め や ゆ よ ら り る れ わーわい
わきー